家族でハイキングを始めて1年経ちました。
自然の中の大きな公園、のんびりした里山、キラキラまぶしい砂浜や波の割れる雄々しい磯など色々歩いてきて、低山の山頂を目指すハイキングコースにも挑戦するようになりました。
ついに「山頂を目指す=登山」のカテゴリーに入ってきたなぁと。
それで最近、地図や歩行技術など、山の本をよく読んでいます。
これは永久保存版!と感じた本に出会えたので記録。
生死を分ける、山の遭難回避術: 実例に学ぶリスク対策の基礎知識
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筆者の羽根田治さんは、野外活動分野での著作が多く、特に山岳遭難のドキュメントシリーズが有名です。
私が読んだのは、ドキュメント単独行遭難とドキュメント 滑落遭難 (ヤマケイ文庫)です。
ドキュメントシリーズはすごく臨場感があってドキドキします。
小学生の長女も大好きでたまに読みふけっています。
登山用語を尋ねてくるので、一緒に調べて知識が増えます。
事実は小説より奇なりという言葉がありますが、滑落で重症を負いつつ奇跡の生還を果たした登山者、その精神力や技術にひたすら凄いと感じ、助かった瞬間に感動します。
遭難者本人や関係者への取材、検証を元に執筆される遭難話はすごく勉強になるのですが、初心者が後学のため覚えておきたい内容は「複数の要点」であり、各要点は多岐の分野にわたってしまい、繋がりがありません。
(例えば、気象の○○のこと、○○は道迷いの原因、○○なときは○○に気をつけるなど)
ですが今回紹介する本は、初心者が欲しかった情報が体系的に分かりやすくまとまっています。
オールカラーでグラフや挿絵、写真が多く、視覚的にもスッと頭に入りやすくて素敵です。
目次
昨今の遭難事情
第1章は、昨今の遭難事情について読めます。
警視庁の統計データや主な遭難事例、昔の登山スタイルや流行り廃り、どのようにして近年の登山ブームに至るのかまで分かって面白い。
登山客の高齢化に伴って変わってきた遭難内容、実際の遭難事例から見る特徴など、登山遭難について大きく広い視点で情報を吸収することができる。
遭難事例と教訓
第2章と第3章は、第1章と対比して、登山に関するテーマひとつひとつを細かく掘り下ろす細かな視点で書かれています。
テーマひとつにつき、
・とある遭難事例
・その教訓
という流れで読めます。
第2章は「初心者が陥りやすい落とし穴」
第3章は「経験者でも遭難する」
例えば、「体力不足で疲労困憊」というテーマでは、まず、2005年に疲労で行動不能になった夫婦の遭難事例を読む。
その後、教訓1で、遭難事例の解説とアドバイス。
(余力を残しておくのは万一のアクシデントに備えるため)
(鎖場やハシゴ、岩登りの技術や雪山ならピッケル・アイゼンワーク)
自分に合った山を見極めるために、上記が大切だと分かります。
それに続く教訓2と3では、
自分の体力と山のグレーティングを客観的に正当に判断する方法やデータなどを提示してくれます。
今まで、登山中のエネルギーの消費量を求める公式など知らなかったし、個人差があるから…と客観的に判断しにくかった体力の自己評価方法や、山の技術的難易度など、参考になるデータが多く、とても参考になった。
このように、初心者が知りたいテーマについてたくさん実例と解説が読めます。
テーマは、天気や持ち物、低体温症、高山病、熱中症、落石など多岐にわたっています。
遭難しないための心がけ
第3章では、登山経験者向けのテーマになっていて、登山届提出の重要性や正常性バイアス・楽観主義バイアスなど遭難しないための大切な知識が読めます。
正常性バイアス
楽観主義バイアス
この二つの心の動きの上に、「引き返す労力」と「突き進む労力」を優柔不断に比べてしまうと、
『この道じゃない気がするけど、なんとかなるだろう』
『戻るより、進むほうが楽』
と、引き返す判断が下せず、道迷い遭難のリスクが高くなる。
(p.121)
ハッとする言葉です。
これは、ハイキング中に常に心しておかなければなぁと思いました。
遭難救助
第4章では遭難救助について。
救助要請チャートや応急手当、ビバーク法、費用や保険について読める。
何かあったときには動揺してしまうので、yes/noチャートが心強い。
自分が行動不能になったときと仲間が行動不能になったときの2種類ある。
でも、これを読みながら、
子どもが行動不能になるのは親の責任だから、救助を要請する事態に陥らないことが肝要であって、その為に、準備・判断を問題なく行い、行動中も常に気を配らなくてはと思った。
トレーニングや体調管理
第5章は普段のトレーニングや体調管理について。
趣味をハイキング・登山と言うなら、本当に日頃のトレーニングが必要だと感じる今日この頃。
最近は親よりも子どもたちの方が歩くスピードが速いので、こっそりトレーニングしてます。
本の中では、筋力アップのトレーニング方法や、カーボローディング(運動=登山の2,3日前から炭水化物の摂取量を増やす食事方法)について書かれています。
ランニングの本と同じ内容なので知っていたけど、登山でもカーボローディングとは!
自分たちはバテてしまうような獲得標高までいかないので、あえて糖質貯めこんだりしないけど…。
いや、普段食べてるお菓子で、糖質脂質まかないきれてるわ…。むしろ余ってるかも、反省。
そういえば、子どもは行動中にすぐお腹が減って、いつもおにぎり食べる!
ベンチが無い場所だと登山道のわきで立ち食い。
子どもにはカーボローディングすると良いかもしれない。
覚書
自己責任
「事例3 人為的落石が直撃して死亡」より
とくに近年は、岩場やガレ場の基本的な歩き方を身につけないまま3,000m級の山々にやってくる登山者も後を絶たず、槍・穂高連峰の縦走路などでは、無意識的に石をガラガラ崩しながら歩く登山者も見受けられ、「危なくて仕方がない」という声も聞こえてくる。
(p.17)
私は岩登りの技術が必要な危険な所へわざわざ行きたくないし、行くつもりもない。
でも行くならば、必ず講習などで登攀技術を訓練してからにする。
学ぶことのできるものを学ばずに他人の害になるのは罪だと思った。
また、この部分を読んで、自分や家族が被害を被る恐れもあるのだなと思った。
故意に落石を起こす人はいないし、起きてしまったらどうしようもないのも分かるけど、運が悪かったの一言で家族を失いたくない。
去年富士山で落石死亡事故もあったし、山に登るというのは命がけだと心得よう。
将来的には家族で富士山へ…と思っていたけれど、子どもたちが自分の命を考えて承諾できる年齢になるまではつれて行けないと思った。
そのくらいの年齢なら、登山拒否なら家で留守番できるし。
本の中でも述べられている。↓
誰に強制されたわけでもなく、自ら好きで山に登る以上、登山中に発生したアクシデントに対しても自分たちで対処し、最終的に自力で下山するのは、登山者の義務といえます。
(p.132)
リスク回避の重要性
その意識を持つことが、山に潜んでいるリスクを回避することにつながっていくのです。(p.30)
山へ行くときは、私が計画しているし、行動中に地図とGPSを持つのも私。
しっかりリスク回避をしなければならない。
急激に温めるのもよくない
「事例9 夏山でも低体温症に」より
低体温症の症状が進行しているとき(※)に、入浴や暖房、マッサージなどで急激に体を温めると、体表部の冷たい血液を体の深部に送り込んでコア温度を低下させることになり、かえって危険な状態をまねいてしまいます。
お湯を入れた水筒や使い捨てカイロなどを首筋、脇の下、足の付け根に当てて、体のコアを温めるようにしてください。(p.85)
※行動に支障をきたすまで症状が悪化している場合
↑知らなかったので、メモ。
低山でも積雪
「事例18 冬の丹沢で単独行者が行動不能に」より
低山や中級山岳では、たとえ吹雪にはならなくとも、積雪で登山道が隠されることによる道迷い遭難事故が多発しています。
それだけ冬山の自然条件は厳しいものと心得ておきましょう。(p.111)
真冬の間は、積雪を警戒して1000m以上の山頂へは行かず、数百mの麓を散策していました。
来シーズンが暖冬じゃなければ積雪箇所と遭遇するかもしれないので、これは覚えておきたい。
まとめ
山では、「今やるべきことを先延ばしにせずに今やる」ことが、リスクの回避につながっていくのです。(p.121)
この本で、たくさんの大切なことを知ることができ、予習復習に何度も使えるので、豪華すぎる1冊でした。
生死を分ける、山の遭難回避術: 実例に学ぶリスク対策の基礎知識
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